「誰を王とするか」亀甲山キリスト教会牧師 伊藤裕史
今年も残すところ1か月。皆さんにとってどのような年だったでしょうか。今年の大きな出来事は平成から令和に移ったこと。宗教的にはカトリック教会の教皇が日本にやってきたこと。今年この二人の王、天皇と教皇が握手をし、多くの人に歓迎されているのを見ると複雑な気持ちになります。
世界で最初のクリスマスの時、ユダヤの王はヘロデでした。ヘロデは当時支配を広げていたローマのお墨付きによってユダヤの王となりました。王となったヘロデは自分の地位を守るため、これを少しでも脅かす存在を容赦なく殺す独裁者となりました。このヘロデの所に東方の博士たちがやって来て、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです」と言ったのです。「これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた」とありますが、それは当然です。独裁者ヘロデにとっては最悪の知らせです。自分の地位が脅かされることを感じたからです。
しかし聖書にはそれに続いて「エルサレムの人々も皆、同様であった」と言っています。彼らはなぜ不安を抱いたのでしょうか。王でも独裁者でもない人も実は「自分の人生」という国の王であろうとしているからです。自分の人生は自分のものだ、と思っている人は不安を覚えるのです。
クリスマスは、神の子イエスを王とするか、自分を王とするか、2つの人の姿を浮き彫りにしたのです。そして2つの生き方があることを教えるのです。一方には、まことの王の誕生に脅威を感じて不安を覚える生き方、他方には、自分が王であることをやめてまことの王の前に進み出る生き方です。皆さんは2つの正反対な生き方のどちらを選ぶのでしょうか。
ヘロデやエルサレムの人々と違う選びをした東方の博士たちは「その星を見て喜びにあふれ」ています。それは、イエス・キリストを真の救い主と知っているからです。事実、イエス様は、力をもって支配するのではなく、愛によって弱い者、貧しい者、苦しんでいる者に寄り添って下さいました。そして最後は、私たちの罪を全て背負って十字架にかかって死んで下さったのです。私たちのためにご自分の命を犠牲にして救いを与えて下さる方として、イエス・キリストはこの世に来られたのです。この方こそ私たちの真の王です。
この一年いろいろなことがあったと思いますが、最後にもう一度、このクリスマスの喜びにあふれて頂ければと思います。