「新型コロナの中で」 亀甲山キリスト教会 伊藤裕史
新型コロナの影響を受けた世界の中で何ができるか。私たちはこれからウィズコロナだけでなく、アフターコロナを考えていかなくてはいけません。それは単に礼拝ができることを目指すのではなく、もっと広い意味で変化をしていかなくてはいけないことかもしれないのです。
しかしまず、私たちは直接的に影響が出ている人たちのことを考えていきましょう。9月10日は世界自殺予防デー。WHO(世界保健機関)が「自殺に対する注意・関心を喚起し、自殺防止のための行動を促進すること」を目的として制定しました。日本でも、自殺対策基本法に基づき、9月10日から16日までを自殺予防週間と定めています。しかし今年は新型コロナの流行により、特に注意しなくてはいけません。人々に影響が出ているのは決して経済的なことだけではないからです。今年5月上旬、アメリカで「新型コロナウイルスの危機の結果、今後10年間で最大7万5千人が『絶望死』する可能性がある」という衝撃的な予測が発表されました。日本でも「今後自殺者が急増するのではないか」との警戒感が高まっています。皆さんはどうですか。心理的な不安で苦しんでおられないでしょうか。誰もがダメージを受けているのです。私たちは直接的に、このことで働かなくてはいけないのです。
日本で自殺が注目されるようになったのは1990年代後半。戦後最悪の金融危機の時、自殺者の数が初めて3万人を突破したからです。自殺を生み出す不安は、経済的な混乱や、大きな災害、疫病が原因だと言われ、その後ずっと自殺者3万人が続きます。しかし大きく減少傾向を示します。それは不思議なことに東日本大震災が起きた2011年のことでした。この時、大きく経済が混乱し自殺者が増えることが予想されていましたが、その予想は見事に外れたのです。そして2012年から大きく自殺者の数が減っていくのです。昨年度は20169人と報告されています。
災害があったのになぜそのようになったか。ある人は「倒すべき敵」が生まれて、人々の意識が社会の連帯へ向かうことで日々の生活が充実していったからだ、と分析しています。
今年、ずっと続いている新型コロナウイルスに対する戦いは、私たちに失望をもたらすのでしょうか。それとも倒すべき共通の敵として、私たちに連帯して生きる目的を生み出してくれるのでしょうか。一緒に力を合わせて倒すべき敵と考えれば、自殺者を増やさずに済むのかもしれません。様々な壁を乗り越え、同じ時代を生きる者として力を合わせて共に戦い、生き抜いていきましょう。