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LAFORET 2017年6月

彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。(旧約聖書 創世記11章4節)

現在、東京都美術館で「バベルの塔」展が行われています。一番の見どころであるブリューゲルの「バベルの塔」は旧約聖書の創世記11章1節から9節までのお話を題材にしています。今回来日した作品は、ブリューゲルの2つ目の「バベルの塔」です。個人的には最初の作品のほうが好きなのですが、細部にわたって描かれているリアルな描写と、壮大なスケールの構図が見どころであるとのこと。ぜひ機会があれば見に行っていただきたいと思います。

しかし、キリスト教の背景がなく、聖書を知らなかった私と同じ時代を生きて来たものにとって「バベルの塔」は聖書の物語ではなかったように思います。これまで様々なアニメや映画の題材として取り入れられて知ることになったからです。バベルの塔は、私にとっては「バビル2世」の中に出てくる主人公の基地でした。ストーリーも聖書と関係なく、似ているのは階段状の塔という形だけ。全く聖書とは関係のないものでした。同じように今でも根強い人気のある「新世紀エヴァンゲリオン」にも聖書にまつわる設定があったりするようですが、ほとんどがいいとこ取り”です。多くの作品に影響を与えているという点では、「聖書は魅力的なものである」と考えることもできますが、聖書の背景を知らない人にとっては本物を知る機会が奪われることにもなりかねません。

ブリューゲルの「バベルの塔」もそうですが、キリスト教が背景にあるところでは、聖書を理解して聖書の時代を再現しようとしたり、今の時代に置き換えたりして作品を作っています。ブリューゲルは決して聖書のバベルの塔のお話を忠実に描写したかったのではなく、自身が生きている時代にも人々が「バベルの塔」を建設している、という意味を込めて書いているように思えます。彼は聖書の警告を理解して描いているのです。

日本人は無宗教だと言われる反面、様々な宗教的な行事を自分たちの中に取り込んでいます。初詣、七五三のお祝、クリスマス、結婚式、お葬式。最近のハロウィンもうまく取り込みました。しかし、本物だけが持っている力を取り込むことはできているのでしょうか。

国際化が進む現代、言葉だけ国際化して自分たちの中に本物がなければ、バベルの塔の物語のように、散らされてしまうのではないでしょうか。