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Laforet 6月号

   

「疑う心」亀甲山キリスト教会牧師 伊藤裕史

皆さんは聖書の中のイスラエルの初代の王サウルについてご存知ですか。

サウルは神様によって見いだされ、サムエルから神様から特別の祝福を受けて初代の王となりました。しかし、サウルは自分の成功により高慢になってしまいます。

そんな時、ダビデがペリシテ人との戦いで活躍し、英雄になったことから、苦難の道を歩み始めるのです。人々が「サウルは千を討ち、ダビデは万を討った」、つまりサウル王よりもダビデをたたえているのを耳にしたからです。サウル王は、自分の地位を脅かすダビデに疑いの心を持ってしまうのです。

「サウルはこれを聞いて激怒し、悔しがって言った。『ダビデには万、わたしには千。あとは、王位を与えるだけか。』この日以来、サウルはダビデをねたみの目で見るようになった。」(サムエル記上18:8、9)

さて、現代社会は「疑う心」であふれています。自分の身を守るために、子供から大人まで、疑いましょう、と勧められます。今の子供は知らない人から声をかけられても、信じてはいけない。何か問いかけられても、嫌です、分かりませんと大きな声で答えるように、そして、他の大人に助けを求めたり、その場から遠ざかることを教えられています。子供だけではありません。ご年配の方も同じです。家族、銀行員、弁護士、裁判所、いろいろ姿を変えてお金を取ろうとする詐欺から身を守るために、信用してはいけない、疑ってかかりなさいと勧められるのです。銀行のATMの周りには警告文が貼られています。もちろん、今の社会の中でこれは自分の身や財産を守るために必要なことです。しかし、疑う心が私たちを生きにくくしていくのです。

忠実な僕ダビデは神の民イスラエルを守るために戦いました。しかしサウル王は、このダビデを疑い、殺そうと心に決めます。サウル王はダビデを殺すために様々な方法をもちいました。自分の手で殺そうとしたり、敵であるペリシテ人を使ったり、ありとあらゆる方法で殺そうとするのです。神様がダビデを守って下さり、そのどれも成功はしませんが、疑いの心がサウル王の人生を変えてしまったのです。サウル王は亡くなるまで、およそ40年間王として過ごしますが、幸せだったのでしょうか。サウルは王という地位は手に入れましたが、手に入れた地位を守るためだけに40年という自分の生涯を過ごすことになったのです。

皆さんはどうでしょうか。誰かを疑う心でがんじからめになって、前に進めなくなっていないですか。もし、それに気が付いたなら、それが本当に必要なものか、振り返ってみてはいかがでしょうか。