「夏祭り」 亀甲山教会牧師 伊藤裕史
今年の夏は豪雨、台風、猛暑など、これまで経験したことのない災害に見舞われています。皆さんも健康や安全にはお気を付けください。
暑い夏ですが、各地で夏祭りが行われています。牧師は全国各地に赴任しますので、各地の祭りを見る機会があります。私の生まれた山口ではこの時期「山口七夕ちょうちんまつり」が行われます。町の中心にあるアーケードが紅色の提灯で埋め尽くされます。7月には山口祇園祭もありますがどちらも静かな祭りです。
それとは違い、以前いた高知では有名なよさこい祭りが行われ、町中活気に満ち溢れます。よさこいは踊りを中心としたお祭りですが、その踊りは、単にきれいではなく、生きるエネルギー、心のエネルギーをぶつけている、そんな気がします。今では全国で活気あふれるよさこいが広がっています。
よさこいを見ると、聖書の中でも同じように踊っている場面を思い出します。出エジプト記の中で、エジプトを脱出したイスラエルの民が、追いかけてくるエジプトの軍隊から守られたときの場面です。
「ファラオの馬が、戦車、騎兵もろとも海に入ったとき、主は海の水を彼らの上に返された。しかし、イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んだ。アロンの姉である女預言者ミリアムが小太鼓を手に取ると、他の女たちも小太鼓を手に持ち、踊りながら彼女の後に続いた。ミリアムは彼らの音頭を取って歌った。主に向かって歌え。主は大いなる威光を現し/馬と乗り手を海に投げ込まれた。」(出エジプト記15章19-21節)
何も備えのないイスラエルの民たちを追ってくるエジプトの軍隊を神様が海に飲み込ませて、イスラエルの民たちが救われたことを感謝して踊っています。これまで不安だった民たち、もう駄目だと思った時に神様が働いて助けて下さった。心の中のこの喜びを一気に吐き出すような、そんな場面です。
考えてみると、ちょうどこの時期行われる東北の祭りも、同じようなエネルギーを感じます。短い夏のこの一瞬に、長い冬の間押し込められた思いをぶつけている。私たちは生きているぞ、それを宣言している、そんなエネルギーです。大学時代、それぞれの祭りを見る機会がありましたが、仙台の七夕祭り、山形の花笠まつり、秋田の竿灯、そして青森のねぶたと北へ行くほどより大きな熱気が感じられました。いつも静かな東北にはない生きるエネルギーがそこに感じられました。
皆さんは心の中の思いをぶつける時がありますか。祭りは宗教的な意味合いがあって、なかなか積極的に参加できませんが、この時期、そこに住む人の生きる思いを感じてみてほしいと思います。