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LAFORET 2017年2月

いのちの植林

世界が抱えるテーマは幾つもありますが、その一つは間違いなく環境問題です。緑が世界規模で消失しているのです。地球全体に酸素を供給しているアマゾンの広大な密林は、毎年急激に消失していると聞いています。その結果、単にアマゾン周辺の環境だけではなく、地球を取り巻くメカニズムに大きな影響を与えているのです。温暖化や洪水の頻発なども、緑の喪失によるものであることは指摘されているところですが、しかしその影響は環境を破壊するだけでなく、私たちの心にもさまざまな形で及んでいるのではないでしょうか。

昔、富山の薬売りの商人は、緑を大切にする家、緑を大切にする村を信用したという話を聞いたことがありますが、緑を大切にしなかったことによる「つけ」が、今様々な形で現れているように思われてなりません。

2004年にノーベル平和賞を受賞した、ケニアの環境活動家のワンガリ・マータイ女史は、アフリカの自然が破壊され、緑が喪失していくことに心を痛め、何とかしなければと考えました。そして、身近な所に七本の木を植えることから活動を始めました。 やがて、マータイ女史の活動に賛同する人が続々とこの活動に加わるようになり、ついに合計三千万本もの木が植えられました。このことによって、環境が著しく改善されただけではなく、産業基盤の整備が進み、利害を争う内戦の危険も克服されて、ノーベル平和賞を受賞することになりました。植林を通して国を興し、人々の心が一つとなっていったのです。

翻って私たちの国の現状に目を向けるとき、温暖化による自然破壊や災害の頻発が深刻になっていると同時に、心の荒廃も予想以上に進んでいると言わざるを得ません。目を覆いたくなる幼児虐待や子供が犠牲となる事件が毎日のように報道されています。この現状を憂う人たちによって、自然を回復するための地道な努力が重ねられ、心の荒廃を食い止めるための取り組みが各地でなされていますが、私たち一人一人も、置かれた立場のなかで“いのちの植林”をしていくことが求められていると思います。

聖書には「何事も利己心や虚栄心からするのではなく、へりくだって、互いに相手を自分より優れた者と考え、めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。」(フィリピの信徒への手紙2章3節4節)と記されています。

私たちに求められる“いのちの植林”とは、言い換えれば互いに相手を思い合うことかもしれません。もう少し子供との時間を確保することかもしれませんし、出会う人々に笑顔を向けることかもしれません。マータイ女史が7本の木を植えることから活動を始めたように、私たちも小さな一歩を踏み出すことによって、家族や周りの方々の心にぬくもりを残すことが出来れば幸いです。祈りつつ、へりくだった心で、人をそして環境を大切にすることを心がけたいものです。